思いを伝える「ことば」
私たちが日々使っていることばは、少なくとも自分自身ではいつから話し始めたのかわから
ないのが普通です。しかし、こども園の0歳児、1歳児の保育室では、言葉にはなっていない
けれども“伝えよう”とする「音声」や「単語」が飛び交っています。周りの大人はそれを毎
日聞いて、いろいろなことを教えてもらっています。
年が明けて数日がたったころ、1歳児の部屋で私に何かを伝えようと一生懸命に話しかけて
くる子ども(Aちゃん)がいました。Aちゃんは少し前まで短い言葉でお話をしていましたが、
その日は長い文章でお話ししていました。私もその言葉を受け取ろうと一生懸命尋ねながら聞
いていたのですが、残念ながら解読できず、その場を担当の先生に預けて部屋を出ることにな
りました。そんなことがあった後に担当から聞いたエピソードです。
ある日の朝のサークルタイムで、私に話しかけてくれたAちゃんが急に「〇〇、いない」と
言ったそうです。〇〇というのは、数か月前におひっこしで転園したお友達の名前です。きっ
と、「〇〇ちゃんがいないな~」と思いながら何週間かを過ごしていたのではないかと思われ
ます。そしてこの日、その思いが言葉となって出てきたと思うと、思いを伝える言葉の重さに
心が震える思いでした。そして、私たち周りの大人が、子どもから出てくる一言一言や、出て
こない思いもしっかりと受け止める大切さを、改めて教えてもらったできごとでした。
園長 中武 亮子